
暖冬とはいえ、厳しい寒さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。先月は“ガッツがある女性”アスレティックトレーナーとして活躍されている井上かなえさんでした。今月、井上さんからバトンを引き継いだのは、独立開業しLEBO Conditioning Salon代表をされている出口直明さんです。是非一読下さい!
---アスレティックトレーナー(ATC)になろうとしたきっかけを教えて下さい---
自分にとって一番の理由は、人の身体に関わることや、人の身体について知ることがおもしろかったからです。
思い返してみると、昔から漠然とスポーツに関わる仕事をしたいと思っていて、膝のACLを断裂し、スポーツ医学の世界と出会ったことが大きなきっかけとなりました。
その後、順天堂大学に進学したことで、恩師の鹿倉二郎先生と出会いATCのことを知りました。僕の時代は順天堂大学が日本スポーツ協会のATの認定校ではなく、無資格で自分たちで勉強した知識だけで卒業するというようなものでした。この時にもっと体系的に学んでいないとだめなんじゃないかと思っていました。そんな時にアメリカへの研修旅行に参加し、アメリカの規模の大きさや進んだプログラムがあることに心を動かされました。そして卒業後にアメリカにわたりました。
---アメリカでの学生トレーナー時代に苦労したことや大変だったことはありますか?---
僕にとって一番大変だったことは「言葉」です。私の発音には「なまり」があるらしく、何度も聞き返され、くじけそうになることも少なくなかったです。アメリカに来てからもyoutubeやチューターを活用し英語の練習をしましたが、そんなに上達しませんでした・・・。
特にフットボールシーズン中はたくさんの選手と話すことがあったので、辛かったですね。
また電話でのインタビューも毎回めちゃくちゃ緊張しました。よくクラスメイトに練習してもらっていました。
---その他、アメリカで印象に残っている出来事がありましたら、教えてください---
NFL St.louis Rams(現Los Angels Rams)でインターンしていたことです。サマーキャンプの間は、毎日朝の6時から夜の9時半くらいまで働きました。
インターン中に着るものは下着のパンツ以外のすべてが支給され、ご飯も毎食ケータリング、ゲータレード(アメリカのポカリ的ドリンク)も山ほどあり、トリートメントに使う道具、高価なテーピングも際限なく使えるなど、巨額の資本が動いていることを直に感じ、日本には無いようなスケールのスポーツ文化に触れることができました。
AT的な話でいうと、物療などは最新のものなどを活用していましたが、リハビリの考え方などは基本に忠実なんだなと、本質は変わらないということを学びました。
---帰国後から現在の仕事に至るまでの過程を教えてください。---
帰国後はまず関西の大学のアメリカンフットボールのAT務めました。渡米前の数か月間、インターンシップとして活動させてもらったことがつながりとなり、ここに決まりました。
その後、千葉のコンディショニングジムに移りました。ここで初めてチームではなく、一般の方に対する業務を行いました。そしてフィットネスクラブでの「パーソナルトレーニング」と出会いました。
ここで2年ほど勤めました。誰の為に働いているのかわからなくなり、自分のサービスを直接相手に届けたいと思い、昨年2019年に退職し、独立開業を行いました。2019年10月には自分の店舗を持ち始め、自身のLEBO Conditioning Salonを経営しています。
---現在の仕事内容を教えて下さい---
現在は広尾・恵比寿エリアでLEBO Conditioning Salon(http://www.lebogym.com)という予約制のパーソナルトレーニングジムを経営しています(現在もお客様を大募集しております)。
腰痛や肩こりなどの慢性的な不調を改善したいという方や、運動をしたことが無いので個別で教えてほしいという方など、お客様のニーズは様々です。
これまでに学んだことはかなり広い範囲のニーズに応えられるので、ATCとしての経験が生きていて充実しています。
---現在の1日の流れを教えて下さい---
出勤したら、まずは部屋の掃除を行い、クライアントを迎えます。セッションの合間に記録やプログラムの調整を行います。また食事、事務作業や集客の準備、ブログの作成などを行っています。
完全予約制なので、予約時間に合わせて活動しており、比較的自由に1日を過ごしています。
そのため、早く帰る日や、予約が午後からだけの時は自宅の掃除や晩御飯の準備をする時もあります。
---出口さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか? ---
同じ釜の飯を食った仲間、ファミリー、同士、などなどいろんな表現ができます。
アメリカでの生活を乗り越えた仲間感があり、JATOのシンポジウムなどに参加すると、いつも実家に帰ってきたような感覚になります(笑)。ATCになった人しかわからない気持ちや経験を共有できるからなのか、勝手に皆さんに親近感を感じています。
またJATOの集まりで知り合ったATCの友人も少なくありません。
---JATOに加入するメリットを教えて下さい---
一番のメリットは、普段は会えないような様々な分野で活躍する方と会えることだと思います。スポーツ現場で活躍する方はもちろん、自分の事業を行っている方、企業で働く方など様々なキャリアを持っている方を知るだけで、アスレティックトレーナーの可能性を感じ、自身の視野を広げてくれます。
昨今は様々な働き方がありますので、どうATCを生かしていくのかを考えるきっかけにもつながります。私自身も、独立開業されている諸先輩方のお話をたくさん聞けたからこそ、その選択肢を持ち、実現に移せました。
---これからATCを取得してアスレティックトレーナーを目指している学生にメッセージをお願いします---
これからはプログラムが大学院へと移行されるので、留学のハードルが高まるのではないでしょうか。今まで以上に、ATCになった後をイメージしながら経験を積む必要があると思います。
アメリカでの経験が、日本においてはほぼ0のように扱われることもありましたし、大学に入ること、ATCを取得することを目標にするのではなく、その後にどう生かすのかという出口戦略まで考えておくべきだと思います。
僕はよく考えていなかったのですが、なんとか今の活動に落ち着いています。でももっと考えておけばよかった、社会の仕組みを知っておけばよかったなと思うことはありました。この苦労をしないで済むために、自分自身とミーティングを行う時間を大切にしてください。
アメリカ生活を乗り越えられる人ならきっと道は開けると思いますので、やりたいことなら挑戦あるのみだと思います。
出口さん、インタビューにお答え頂き誠にありがとうございました。留学中の苦労、帰国してからの苦労を共有していただきありがとうございました。そして、そんな出口さんの言葉からJATOを通じての視野を広げることの大切さを実感しました。次回は、出口さんが尊敬されているというアスレティクトレーナーをご紹介いただきました。来月もお楽しみ!