【第25回JATO 日本人ATC リレー形式紹介企画】

ジメジメした梅雨の季節となりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

先月は、3人の子供の母でありながら、活動を続ける大橋さんにお話を伺いましたが、今月は日本卓球界に必要不可欠な存在である羽生さんに登場頂きます。皆さんお楽しみ下さい!

 

---何故ATCになろうと思ったのですか?---

 

中学高校時代からケガが多く、テーピングの本を購入して自分でテーピングを巻いていたこともあり、今考えるとその頃からなんとなくアスリートのコンディショニングには興味があったのかもしれません。高校2年生の時に何気なく「月刊バスケットボール」を読んでいたら、アスレティックトレーナーの仕事が掲載されていました。当時はまだアスレティックトレーナーは仕事としてもほぼ知られていなかったのですが、とても興味深く、惹かれたのを覚えています(その記事は鹿倉さん著)。その後ACL/MCL/半月板損傷で入院・手術することになり、リハビリを経て競技復帰したのですが、その当時、アスレティックトレーナーは周りを見てもどこにもいません。そんな人がいてくれたら、自分のように大変な思いをする選手を救えるかもしれない!と思ったのがきっかけでした。

 

---学生、社会人時代に、印象に残っている出来事はありますか?---

 

学生トレーナー時代はとにかく無我夢中で、毎日が新鮮でした。大変なことはたくさんありましたが、トレーナーはこういうものなんだと思って一生懸命取り組んでいました。印象に残っていることはたくさんあります。その中から一つ・・・学生トレーナーになってアメフトを担当することになった時に、選手がトレーニングルームにストレッチをしにくるのですが、選手は2mもあり筋肉隆々、私は155cm。担当になった選手が「こんな小さいトレーナーにストレッチなんてできないだろう。違う人にお願いしたい。」と言われたことがありました。もちろん悔しいのですが、当時は英語も流暢ではなかったので言い返すこともでず、ヘッドトレーナーも何も言わずに私に担当させてくれました。選手は気の乗らない雰囲気で私にストレッチをされていたのですが、数を重ねるうちに私を指名してくれるようにまでなりました。この時はとても嬉しかったです。選手に認めてもらえたと感じました。そうやっていくうちにチーム全体からも認めてもらえて、あだ名をつけてくれたり、声をかけてもらえるようになっていきました。

また前回、大橋さん(守本さん)も書いていましたが、電話に出るのがとにかく嫌でした(笑)。私も怒られました!「出なかったら上達しないだろ!」って。

 

---現在の仕事内容を教えて下さい---

 

現在は日本卓球協会で専任アスレティックトレーナーとして働いています。業務は多岐に渡ります。味の素ナショナルトレーニングセンターの卓球専用練習場に常駐していますので、JOCエリートアカデミー選手の日常練習時や、男女ナショナルチーム(シニア、ジュニア、小学生)の合宿時に体調不良やどこか痛みのある選手の評価をし、必要に応じて医師につなぎます。状態に応じてケアやリハビリ等を行い、所属先にも連絡を入れます。また、海外遠征時の帯同薬の準備を医師の指導のもと行ったり、現地からの連絡を受け指示を出したりします。

さらに、現在日本卓球協会では、日本全国で小・中学生を強化する事業を行なっており、そちらに赴きコンディショニング指導等を行なっています。

 

---現在の1日の流れを教えて下さい---

 

通常は9時半出勤です。合宿での練習は午前午後の2回行なっています。ナショナルチームには男女ともにトレーニングコーチがいますので、ウォーミングアップ等はその方々が行なっています。私は必要に応じてケアをしたり、練習ができない選手には別メニューで対応したりします。ジュニアや小学生の選手であれば医師の診察時には同行し、内容を把握して、ナショナルチームのコーチ、母体コーチ、保護者、卓球協会のチームドクターに報告するようにしています。

また合宿毎回ではありませんが、体力測定やコンディショニング講習会を選手たちに対して行なっています。

余談ですが、卓球は小学生の頃から国際大会に出場することもあるので、英会話を教えたりもしています。

 

---羽生さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか---

 

最近ではあまり定期的な集まりに行けていないのですが(泣)、日本におけるホームというか、大橋さんも言っていたように同志が集まる場と思っています。そこに帰ればいろいろな方々から刺激をいただき、もっとがんばらなければ!と思わせてくれるとことだと思っています。

アメリカで学生トレーナーをしていた時は、年に1度のシンポジウムで先輩始め日本人ATCにお会いすることが本当に楽しみでした。

 

---JATOに加入するメリットを教えて下さい---

 

ネットワークを広げられること、そして視野を広げられることですね。現在ではいろいろな場所でATCが活躍されています。そういった方達とお話したり意見交換したりすることで新しい発見が生まれたり、現在の自分の仕事にもとても役立つと思います。チャンスを見つけてシンポジウムやセミナーにも参加していきたいです。

 

---これからATCを目指している学生にメッセージをお願いします---

 

アスレティックトレーナーの技術や知識は、スポーツの現場で仕事をする上だけではなく、日常生活の中でも活用できる一生モノの技術や知識だと思います。また、海外での生活経験そのものも自分の人生にとってかけがえのないものになるでしょう。アスレティックトレーナーの勉強ということだけにとらわれず、視野を広く持ってたくさんのことを吸収してほしいです。

 

 羽生さん、お忙し中貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございます。日本卓球界に無くてはならない存在である羽生さんですが、学生時代の悔しい思い出が成長の糧になっていたんですね。また視野を広く持つ事の大切さについて熱いメッセージも頂きました。来月は、“ラグビー界のマッチョ”な方を紹介頂きましたので、楽しみにして下さい!