春風待ち望む今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?
先月はラグビー現場経験豊富でワイルドな鵜殿さんの貴重なインタビューを聞かせて頂くことが出来ましたが、今月はこちらも現場経験豊富で、JATOの発展に多大なる貢献をしています木村さんにお答え頂きます。是非木村さんの熱い想いを受け取って下さい!
---何故ATCになろうと思ったのですか?---
高校3年間ラグビーに没頭し、1狼後も大学受験に失敗していた私に父親から「働くか、留学しろ。2狼は無理だ。」といきなり言われた事がきっかけで、まずは自分が何を勉強したいか見つけに行こうと、グアム大学へ留学する事となりました。最初の1年半はホームステイをしました。ホストファミリーの親戚がロサンジェルスオリンピックにも出場した柔道家だったこともあり、何となく身体を動かしたくなったので、柔道を習う事になりました。高校の体育で柔道を選択はしていましたが、柔道はほぼ素人の私でしたが、まじめに練習していたところ、いつのまにか柔道のグアム代表としていくつかの大会に出場するようになりました。その大会の1つがアメリカのコロラド州コロラドスプリングスにあるオリンピックトレーニングセンターで開催されていたUSA OPENでした。その大会会場で怪我をした選手にかけよったり、テーピングをしたりしているスタッフが眼に留まりました。とっさに「このような職業はどうやったらつけるのですか?」と質問したのが私のATCとの初めての出会いであり、NATAを知る事になったきっかけでした。そのATCから「全米に数十校カリキュラムがある大学があるから調べてごらん。」と言われ、早速グアムに戻った私は、大学のPEの先生の元へかけつけ、「NATAのカリキュラムはどこの大学にあるのですか?」と質問し、片っ端から電子タイプライターで手紙を書き、大学のカタログを取り寄せてみました。取り寄せたカタログと一緒に「是非うちの大学に来て下さい。」と親切な返信を下さったオレゴン州立大学に編入する事になったのが、グアムに留学して4年後の事でした。
---学生、社会人時代に、印象に残っている出来事はありますか?---
グアム大学留学時代の柔道がきっかけでオレゴン州立大学に編入した私ですが、当時のカリキュラムの1つ先輩に八田倫子さん、2つ上に右田雅義さん(現Western Washington大学アスレティックトレーナー)、菊地聡さんという諸先輩方がいらっしゃり、公私ともに大変お世話になりました。レベル1のカリキュラムの説明会に行った時には100名近い学生が集まっており、1学年10人前後しか入れないと聞いた時はどうなることかと思いましたが、何とか正式にプログラムに入る事ができました。その時届いたプログラムへの入学許可証と、その証として配布されたテーピングはさみは今でも自分のアスレティックトレーナー原点であり、宝物です。
帰国後、日本航空の女子バスケットボール部のトレーナーを経て、現トップリーグのリコーラグビー部でフルタイムのアスレティックトレーナー、7人制のラグビー代表のトレーナー帯同などの機会をいただけました。また、2008年~2011年には15人制ラグビーの日本代表に帯同させていただきました。ラガーマンにとっては、英雄、ラグビーワールドカップの第一回のトライ王であり、雲の上の存在であった、ジョン・カーワンさんがヘッドコーチであり、そんな方と4年間一緒に闘い、2011年のワールドカップニュージーランド大会をサポート出来たのは一生の思い出です。スタッフと試合前に肩を組んで国歌斉唱したり、NZ代表オールブラックスとの対戦では目の前で迫力あるハカを見た時は鳥肌が立ちました。あれから8年、今年9月にはラグビーワールドカップ日本大会が全国各地で開催されます。あの盛り上がりが日本に上陸し、全世界からラグビーファンが日本にいらっしゃると思うと感慨深いです。皆さん、是非、観戦にいらして下さい。
---現在の仕事内容を教えて下さい---
ラグビーワールドカップに一緒に帯同させていただいた当時のチームドクターの御縁で、昨年5月に東京から北九州市へ移住しました。整形外科に隣接するリコンディショニング施設でトレーニング指導やケアなど、お客様のご希望に合わせてサービスを提供しています。この施設が新たに同市内の新施設への移転準備中で今はその準備に追われています。また、週一回は、九州にお誘いいただいたチームドクターが勤務する田川市の外科病院に勤務し、術後リハビリ中の患者さんを中心にFascia Slick TechnicというIASTM器具を使って治療をしています。また、地元の新日本製鐵八幡のラグビー部と、福岡SUNSのアメリカンフットボール部でのアスレティックトレーナー活動も並行してやっております。福岡SUNSは昨年X2からX1へ昇格が決まり、九州発のX1リーグ参戦チームとなり、東京での試合もあるので楽しみにしております。
---現在の1日の流れを教えて下さい---
リコンディショニング施設の勤務が早番で8時半~18時、遅番で11時~21時までの勤務です。外科病院での勤務は8時半~18時です。
シーズン中はサポートチームの練習・試合に帯同する事が週末に増えます。
---木村さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか?---
同じバックグラウンドを持つ仲間と顔を合わせられる、お互い刺激を受け合える、悩みを共有できる、そんな憩いの場です。私も様々な場面で、何度も助けられてきました。
---JATOに加入するメリットを教えて下さい---
自分自身メリットとか考えた事が無く、NATAの会員になるように、帰国後はJATOの会員になりました。今では諸先輩方のご尽力によりJATOの礎が築かれ、NATAのアフィリエイト団体になり、社団法人としての登記もされ、活動に活気が増してきました。私自身、入会後、HPの立ち上げに関わったり、シンポジウムがまだ1桁台の開催回数だった時に運営委員をしたり、その時出来る事を、1つ1つお手伝いさせていただきました。ある時、1人の日本人ATCに「JATOに加入するメリットは何ですか?」と同じ質問をされた事がありました。「メリットなんて考えないで、自分がJATOにとって何が出来るか入って考えればいい。」みたいな偉そうな事を言った覚えがあります。その後彼はJATOに入会し、今ではぐいぐいとJATOを牽引してくれている理事の1人となっています。JATOはそんな団体だと思います。自分達がJATOにとって、日本のアスレティックトレーニングにとって、これからATCを目指す皆さんにとって何が出来るか、その時代の流れ、ニーズにあった活動へと変革していく、そんな団体へ進化して行けるよう、皆の力を合わせてやって行きましょう。
---これからATCを目指している学生にメッセージをお願いします---
日本人という事に誇りを持ち、その勤勉さを存分に生かし、ATCに向けて頑張って下さい。インターネットの普及により、情報が多様化し、私が留学をした時とは全く状況が異なって来ています。私のようにNATAを知らずに留学される方は皆無でしょう。そんな中で、一つ一つ知識・技術を積み重ね、出来る事の引き出しを増やし、自分の得意性を見いだせる何かを見つけられたなら、それをとことん追求して行くと良いと思います。何か仕事の依頼をいただいた時に、その特異性が自分の最大の武器となることでしょう。
木村さん、お忙しい中貴重なお時間を頂き誠にありがとうございました。木村さんに「JATOに加入するメリットは何ですか?」という質問をした理事に、実は私(JATO理事 武井)も同じ質問を過去にしたことがあります。その際に木村さんの言葉を紹介して下さり、それは今でも心に刻まれています。これからも是非JATOのサポートを宜しくお願い致します。来月は、木村さんが信頼を置いています方を紹介頂きましたので、是非楽しみにして下さい!