【第13回JATO 日本人ATCリレー形式紹介企画】

今年もまた梅雨の季節がやってまいりましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?さて、毎月15日にJATO会員の活躍をリレー形式紹介企画として、世界各国で活躍しているメンバーをFacebookHomepage (Blog)で紹介しています。
先月は、情熱的な山口さんのインタビューでしたが、今月は山口さんからご紹介頂きました高谷さんになります。アスレティックトレーナーとして様々な事に精力的に活動されている高谷さんのインタビュー是非お楽しみ下さい!!

 

---何故ATCになろうと思ったのですか?---

 

慶應義塾大学アメリカンフットボール部で学生トレーナーとして4年間活動をしていくなかで、多くのATCの先輩方に出会い、助けて頂いたことで、ATCになりたい、プロのアスレティックトレーナーになりたいと憧れたのが一番のきっかけです。

 

入部当時のアメフト部はトレーナーサポート体制がほとんど整っていなく、学生がどう頑張っても現場で対応するには限界があり、どうしていいかわからない、ということの毎日でした。環境情報学部に在籍しながら、他の学部で学生トレーナー活動に役立ちそうな授業を受講してみたり、選手の治療やトレーニングに一緒について行かせてもらったり、ATCの方々にお会いしては質問したり助けを求めたり。とにかく学べる所へ足を運んでいるうちに、もっと出来ること、やるべきことがあるはずでは?と自ずとATCの役割に興味をもっていったのだと思います。

 

日常的に起こる怪我への対応、救急処置、テーピングやリスク管理、トレーニングやリハビリ、医師や専門家のサポートスタッフとの連携など、当時の環境下では学べなかったことを、アメリカで実習を積みながら勉強し、経験を積みたい、絶対にATCになると大学2年生の時に夢みていたのを今でも覚えています。

 

---学生、社会人時代に、印象に残っている出来事はありますか?---

 

様々な怪我の対応やサポート、選手が復帰できたときやチームが勝利した時の喜びなどを挙げたらきりがないのですが、一番印象にのこっていることは、ATCとして「連携をする」「連携ができている」ということを目の当たりにした瞬間です。

 

ひとつは、Athletes’ Performance(現EXOS)でのパフォーマンススペシャリストとしてのインターンシップです。APの素晴らしい施設はもちろん、様々な専門家が連携して選手をサポートしているシステム、トレーニングとセラピーが同じフロアにあり、コーチとセラピストがいつでもコミュニケーションをとれる環境がとても衝撃的で、当時(2008)の私にとっては夢のような場所でした。

 

当時のDirector of Performance TherapyAnna Hartmanさんは選手やコーチからの信頼がとても厚く、「Annaに見てもらったら動きが良くなるし、問題が解決するんだよ」といわれるような存在で、コーチが担当しているアスリートがトレーニングにおいて何か動き方が悪かったり、何か疑問があったらAnnaを頼りにして相談に来ていました。

 

何をしているかとても興味深く、空いている時間を見つけては、ひたすらAnnaの傍でセラピーやコーチとのやりとりを見学させてもらっていました。「マジックみたいだけど、マジックじゃないんだよ」といいながら、質問のたびに私でもわかるような英語で嫌な顔ひとつせずに説明してくれたことに感動して、私もAnnaのような人になりたいと思い、パフォーマンスセラピストを目指しました。

 

その年にUndergraduateを卒業し、ATCとなって、それから3年間はGraduate Assistantとしてアメリカの大学で働きましたが、様々な局面にたたされても「連携をすること」を大切にしながらATCとしての経験を積むことができました。

 

Athletes’ PerformanceAnna Hartmanさん, そしてLuke Richesonさんや咲花正弥さんというコーチとの出会い、そしてTCUの陸上チームでアシスタントATをされいていた谷澤順子さんがコーチやサポートスタッフと連携をしながら陸上のアスリートをサポートされている姿を傍で学べたからこそ、そしてその後APとの繋がりから中京大学でパフォーマンスセラピストとしての仕事を経てきたからこそ、今こうしてパフォーマンススペシャリストとパフォーマンスコーチの間をとったような形を目指してこられていると感じています。

 

---現在の仕事内容を教えて下さい---

 

現在の仕事の内容は、簡単に言えば、「動きと感覚を引き出して、動きやすい身体づくり」をするサポートです。

 

肩書きとして、①パフォーマンスセラピスト、またパフォーマンスコーチとしてチーム・アスリートのサポート、②GRIT NATIONというワークアウトスタジオでのコーチ育成とプロジェクトの監修、③「MORACTテクニック」という筋膜(ファッシア)リリースのセミナーのプロジェクトチームの一員として、コンテンツ作成と講師を担当しています。すべての仕事において鍵になるのは、MindsetMovement。「気づき」を与えることを主軸ににしながら、コーチとセラピストの役割を足して二で割ったような役割を、今ある環境で形にしようとしています。

 

アスリートのサポートを行う際には、選手一人ひとりが、どのように動きを捉え、それが身体や動きに現れているかを評価し、動作改善のサポートを行っています。とくに、ウエイトトレーニングの中で良い感覚で力を発揮し、その感覚をスキル練習での動きに繋げるための土台づくりのサポートが私の大きな役割です。そのため、練習やトレーニング、試合に帯同して動きをみたり、ウエイトリフティングのコーチやスキルコーチとコミュニケーションをとり、動きと感覚のすり合わせを行う時間を大切にしています。

 

ショートトラックスピードスケートや陸上競技のアスリートのサポートを軸にしながらも、年齢を問わずジュニアから高齢の方まで、一般の方の動作改善やパーソナルトレーニングにも携わり「動くことの楽しさ」を提供することにも力を入れています。その要素をコーチ育成に活用しながら、「グループワークアウト」として形にして提供しているのがGRIT NATIONです。動作不全、パフォーマンスのギャップをどう埋めるか?という課題に対し、既成概念にとらわれずに、仲間と一緒に様々なことに挑戦しています。

 

MORACTテクニックのプロジェクトにおいては、Fascia(ファッシア)、いわゆる“筋膜”の現時点での正しい情報の探求と普及と、日本オリジナルのツールと「評価とエクササイズ」を掛け合わせることで、動きやすい身体と動きへ繋げていくためのコンテンツとセミナー展開が大きな役割です。様々なバックグラウンドをもった医療従事者の方や治療家さんとの繋がりを広げ、より多くの人が“動けることが楽しい”と思って生きて行けるよう、MORACTとの出会いによって、「職人さん」「治療家さん」「患者さん」すべての人の生活を豊かにできるよう、プロジェクトメンバーと一緒に日々挑戦しています。

 

---現在の1日の流れを教えて下さい---

 

上記の3つの仕事内容で一日の流れは大きく変わりますが、かなり流動的です。

GRIT NATIONにいる週の前半は、午前中は早くて朝6時からパーソナルトレーニング・コンディショニングが始まり、合間の時間に打ち合わせやアイディアを形にするという作業を行っています。午後はアスリートのパーソナルトレーニングを入れたり、グループワークアウトのシフトに入っている18-22時はインストラクターをしつつ、若手コーチの現場育成をしています。

 

ショートトラックチーム帯同サポートの時は、1日半(または帯同期間)の中で、氷上練習、陸上トレーニング、ウエイトトレーニング、私が担当するムーブメントセッションの時間に合わせて動くので、かなり流動的にはなります。「動きと感覚を引き出して、動きやすい身体づくり」から「思い描いている動き」ができるようにすることを優先にし、スタッフと連携をしながらパフォーマンス向上のサポートをしています。陸上選手の帯同サポートも同様に、コーチ陣との連携を大切にしながら、身体の整え方や動きの捉え方のMindsetへと繋げるようにしています。

 

---高谷さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか?

 

ポジティブなパワーで溢れていて、「誰かの役に立ちたい」という思いで繋がっている仲間がたくさんいる場だと思っています。「自分らしさとは何?」と向き合わせてくれるし、そこに行けば自分らしくなれるし、そんな存在です。実際に、仕事や働き方で悩んで岐路に立った時や、自分らしさを失そうになった時にJATOのシンポジウムに行って、たくさんのATCの方々とお話をすることで一歩前に進めました。

 

---JATOに加入するメリットを教えて下さい---

 

人との繋がりやネットワークが広がることが一番のメリットだと思います。

また、ATCとしてどのように社会に貢献できるか、アスレティックトレーナーの存在価値をあげ社会に認知してもらえるか、日本のスポーツ現場や健康産業をどう変えられるか…一人ではなかなか解決できないことを、JATOの一員として何ができるかを考えさせられ、いつも刺激をもらっています。

 

---これからATCを目指している学生にメッセージをお願いします---

 

Your limitations are few, your potential is vast.

これは、私が今でも一番大切にしている言葉で、Athletes’ PerformanceのインターンシップでいつもパフォーマンスコーチのLuke Richesonが私にかけてくれた言葉です。可能性は無限大、どんなに大きな壁があったとしても、信念や情熱を持って、しっかり道筋をたてて夢や目標に向かえば、たとえ軌道修正をしたとしても、かならず夢は叶えられます。何があっても自分で自分の可能性を狭めてはいけないし、常にあきらめずに挑戦し続けてください!

 

 

高谷さん、貴重なお話ありがとうございました。大学時代からATCになる事を夢見て、それを叶え、そして現在も自身の目標に向かいひたむきに努力をされている姿、本当に素晴らしいと思います。次回のインタビューは、現在医療従事者界で話題のトピックを中心に活動をされている方を紹介頂きました。是非楽しみにお待ち下さい!!