
桜の便りが待ち遠しくなってまいりました。皆さんはいかがお過ごしでしょうか?オリンピックに引き続き、平昌パラリンピックも盛り上がっていますね。
さて、毎月15日に世界各国で活躍しているJATO会員をリレー形式紹介企画として、Facebook(@jato1996)とHomepageのBlog欄(https://www.jato-trainer.org/blog/) にて紹介しております。
先月は、東洋大学経営学部マーケティング学科准教授として教育・研究に励み、さらに、体育会アメリカフットボール部の部長兼ヘッドコーチとしても活躍されている西村忍さんにお話を伺いました。今月は吉田早織さんから“アスレティックトレーナー愛”溢れるお話を伺うことができました。ぜひ、ご一読ください!
---アスレティックトレーナー(ATC)になろうとしたきっかけを教えて下さい---
中高生時代はけがが多く、進路を考えるときに“スポーツ選手のサポートをする仕事”に漠然と興味を持ちました。当時は、“(アスレティック)トレーナー”という言葉もまだ広く認知されておらず、ひとまず体育系だろう・・・と東海大学体育学部に進学しました。どのクラブにも“学生トレーナー”など存在しない中、アメリカンフットボール部でプロのトレーナー(麻生敬ATC)が活動されていることを知り、入部を志願しました。厳しい世界であると説明を受け、ひと月のトライアル期間を乗り越え、ようやく本入部を認めてもらえました。アメリカンフットボール部では、麻生ATCや、当時の中澤一成監督から受けた影響も大きく、アメリカンフットボール部のアリゾナ遠征や、チアリーディング部のディズニーワールドでのエキシビションへの帯同、そしてFoothill College(カリフォルニア)でGary Lang ATCの下で夏休みに長期でインターンシップを行う等、大学に在籍していた2年間で、3度もアメリカに行く機会をいただきました。アメリカで“アスレティックトレーニング”という学問に触れ、「私がやりたいのはこれだ!」と分かり、結局東海大学を2年で辞め、University of Nebraska at Omaha(以下UNO)へ編入しました。
余談ですが、自身の大学時代の経験から、現在教員をしている常葉大学の学生に対し、隔年で海外研修を実施しています。奇しくも、このインタビューを受けたのは、母校UNO訪問後にフロリダへ移り、ディズニーワールドで遊ぶ学生たちを近くのカフェで待ちながら・・・ということで、20年ほど前の話をその場で思い出すという、何とも特別な時間を過ごしています。

---アメリカ時代の苦労した思い出は何でしょうか?---
Central Michigan UniversityでのGraduate Assistant(GA)時代全般でしょうか。MajorをAthletic Administrationにしこともあり、それまでとは異なる領域の勉強、例えばスポーツ法などにはてこずりました。辞書を引いても、日本語の法律用語がわからない(苦笑)。急いで日本から、法律用語の辞書を送ってもらいましたが、読んでも結局よくわからずお手上げでした(笑)。
学業面だけではなく、女子サッカーと男女陸上競技担当をかけもちしていたので、早朝練習、昼は選手の授業の合間にリハビリを行い、午後はもうひとチームの練習、そして、夕方から大学院の授業と、日々6~21時は大学に詰め、週末は遠征という毎日を送っていましたので、「しんどい・・・」と思うことはしばしばありました。しかし、同時にSports Medicineの仲間たちとのシェアハウスなど、楽しかったことも多かった2年間でした。

---アメリカ時代の嬉しかった(良かった)思い出は何でしょうか?---
思い出深いことはいろいろあるので、3つ、挙げさせていただきます。
まず、フットボールのホームゲームで初めてサイドラインに並びアメリカ国家を聞いたとき、色々な感情がこみ上げ、自然と涙が溢れてきました。困ったことに、今でもアメリカ国家を聞くと、身震いします(笑)。また、1年目は遠征には連れて行ってもらえないことになっていましたが、頑張っているご褒美だと、シーズンの最後の重要な試合に連れて行ってもらえたことも、嬉しかったですね。
2つめは、UNOでの2年目、レスリングのNational Championship(Division II)をホストすることになっていた年に、Head Athletic Trainer(Tom)のSupervisionの下、レスリングチームに就きました。チームは家族!というようなチームで、私もその一員として受け入れてもらい、学生トレーナーとしても尊重してもらえました。また、全国大会前日にTomから、「スーツは持っているか?決勝は早織に任せるから、用意しておいて!」と言われ、トレーナー用に1席しかないベンチに座らせてもらいました。おかげで、3階級の決勝、団体戦の優勝の歓喜を、同じマットの上で一緒に経験することができました。
最後は、日曜の夜だったと思いますが、毎週同じ時間にパソコンの前に座り、現JATO会長の上松大輔さんらと熱く“チャット”で語り合っていたことも懐かしい思い出です。実際に会える機会は少なくても、同じ時期にアメリカで頑張っていた仲間は励みとなり、今でもSpecialな存在です。

---帰国後から現在の仕事に至るまでの過程を教えてください。(就職活動?の苦労話など)---
幸いなことに、就職活動ではあまり苦労はしておらず、帰国時(2002年)に麻生ATCよりお話をいただき、“東海大学体育会アメリカンフットボール”を引き継がせていただきました。それをベースに、整形外科(リハビリスタッフ)、大学のコンディショニングルーム運営、非常勤講師、アメリカンフットボール日本代表(U-19)等などの仕事も行なっていました。
2010年に転機が訪れ、現職“常葉大学(当時は浜松大学)”でアスレティックトレーニングの教員を探していると情報をいただき、結果的に専任教員として採用していただけました。しかし、大学教員として、学位や研究業績不足で肩身も狭く、かつ脳振盪研究を行いたいと考えていたため、北里大学大学院医療系研究科に入学し、長らく学生生活も送っていました。(やっとこの3月に博士課程を終えられます!)そこでは、視機能の研究が中心となりましたが、今後も視機能や脳機能をテーマに研究を行っていきます。
また、専任教員となり現場活動の比率が減りストレスに感じていた頃(2013年)、アメリカンフットボールのアサヒ飲料クラブChallengers(Xリーグ1部)よりお話をいただきました。6シーズン目となる今シーズンは、コンディショニングコーディネーター(AT、治療家、S&Cの統括)という立場で活動させていただいております。
また他にも、勤務校の学生トレーナーの現場実習指導(主に野球部や陸上部)や、県内の高校野球部のサポート(主には傷害予防のためのトレーニング・セルフケア指導など)などのフィールドワークも行っています。
最後に、ようやく仕事“+α”の活動を開始できるようになって来ました。近隣のスポーツ医や理学療法士、治療家と連携し、“Save the back project”(成長期の腰痛、特に分離症予防)の研究グループを立ち上げたり、浜松のスポーツ関係者が集って学ぶ場の提供するために“Hamamatsu Sports Conference”を開催したりしています。これまでは、チームや学校などの中での自分の役割を模索していましたが、その枠を広げられるようになってきたと思います。

---現在の1日の流れを教えて下さい---
23~7時は家にいますが、それ以外の時間は、外で何かしらしています。平日は、大学での業務(講義・現場実習指導・研究など)や、地元高校運動部への指導、地域貢献活動などを行い、週末は、主にアメリカンフットボールでの現場活動や、大学行事、学会などに参加しています。やりたいことが多すぎて、かつ作業効率も悪いので、1日が24時間では足りない!と思う日々を過ごしています。
---吉田さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか?---
年齢やキャリアに関係なく、私にとってJATOメンバーの皆様は“メンター”のような存在だと思っています。目的ある皆さんの生き方(=働き方や活動、発信されることなど)から、こっそり多くの気付きや刺激をいただいています!そういう方々とのつながりを感じさせてくれる存在だと思います。
---JATOに加入するメリットを教えて下さい---
留学中、NATAのコンベンションに参加した際に、JATO理事に大変失礼な物言いをしたことがあります。「JATOに入ったら、どういうメリットがありますか?(= 何をしてもらえるのでしょう?)」と伺ったところ、会員へのサービスについてもご説明いただきましたが、「何かを与えてもらうことだけを期待されるなら、ご満足いただけるかはわかりません。できれば一緒に、ATCの認知度を高めたり、日本でのアスレティックトレーニングをより良くしていくサークルの仲間になるというつもりで“参加”してもらえると嬉しいです。」と言われました。当時、個々がそれぞれの道を開拓し、ようやくJATOという形を作ったという時期だったと思います。そういう現状を理解せず、与えられることを求めていた自分の発言や態度に、顔から火が出る思いがしました。個々の、そしてJATOとしての活動の積み重ねで、アスレティックトレーナーの認知度は高まっていると思います。しかし、まだまだ確固とした地位を築くには至っていません。ですので、より多くのATCが少しずつでもJATOにエネルギーを集結させ、日本のスポーツ界で一緒に何かを成し遂げたい、また、その一員でありたいと思っています。
---これからATCを取得してアスレティックトレーナーを目指している学生にメッセージをお願いします---
留学も、ATCを目指す過程も、その仲間も、すべて皆さんの財産になると思います。是非、頑張って自分の道を切り拓いてください!そしていつか、皆でワクワクするようなことをしましょう!!
吉田早織さん、海外研修への引率でお忙しい中、貴重なお時間ありがとうございます!! 仕事“+α”でも活動の幅を広げ、新たなものを生み出しているそのバイタリティに勇気をもらいました。また、JATOの会員としてみんなで作り上げていきたいという思いも伝わりました。
来月は、吉田さんがいつも良い刺激を受けている存在で、「バイタリティの塊」だという男性を紹介していただきました。4月もお楽しみにしてください!