第9回JATO 日本人ATCリレー形式紹介企画

晩寒の候、まだまだコートが離せない毎日ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?今週末にはシンポジウムが開催されますので、是非足を運んで頂ければと思います。
さて、毎月15日に世界各国で活躍しているJATO会員をリレー形式紹介企画として、FacebookとHomepage (Blog欄)で紹介しています。
先月は、ラグビー強豪校を支えています大木さんの話を伺いましたが、今月は西村さんの“文武両道”の話を伺う事が出来ました。是非一読下さい!!

 

JATO広報委員

 

---何故ATCになろうと思ったのですか?---
自分自身が中学・高校の部活動でケガをする度に、近所の接骨院に通った経験から、将来はスポーツ現場で選手をサポートできる職業に就きたいと思いました。

 

---学生、社会人時代に、印象に残っている出来事はありますか?---


(留学時の学生トレーナー時代の出来事)
Western Michigan University(WMU)の学生トレーナー1年目のまだ英語がおぼつかない頃、テーピングはまだ比較的ましな方でした。少しきつめと言われることもあったのですが、仲良くなった器械体操女子部1年生の2人がとても足首のテーピングを気に入ってくれて、「4年生になったら、私たちのトレーナーになって欲しい」と当時のアシスタントトレーナーに冗談で言ってました。3年後、それを覚えていてくれたアシスタントトレーナーは、本来はセメスター単位で違う競技で経験を積むのですが、秋冬の2セメスター、1シーズンを通した学生トレーナーとして遠征にも帯同させてもらいました。遠征先で誕生日を迎えた時に、サプライズでチームみんながお祝いのケーキと歌を歌ってくれたことは、本当に嬉しかったです。

 

(WMU卒業前の出来事) 
住んでいた町には、Kalamazoo Tornadoesというセミプロのアメフトチームがありました。大学時代に選手としての経験があったので、トライアウトを受けると見事に合格しました。合格後の最初の練習に参加すると、WMUのアメフト部で仲の良かった選手がいました。選手として合格したことを知らない彼は監督に「トレーナーが来た!」と言ったと思ったら次の瞬間、監督も「トレーナーとしてもよろしく」とまさかの“プレイングトレーナー”としてメンバー登録されることになりました。試合当日は、試合会場に着くとすぐに選手達のテーピングを巻く準備をして、巻き終わるとすぐに自分も着替えてアップをする、そして試合に出るというシーズンでした。試合前からすでに疲れている状態でしたが、ホームゲームの時に留学生仲間が駆けつけて応援してくれたことは、忘れられない貴重な経験でした。

 

---現在の仕事内容を教えて下さい---
2018年4月で東洋大学経営学部マーケティング学科准教授として9年目を迎えます。仕事内容は、大きく分けて教育、研究、学内業務の3つあります。教育は、教員としていわゆる一般教養であるスポーツ健康科学科目の講義・演習・実技を担当しています。担当科目は、必修科目でなく選択科目であるため、また専門科目ではなく教養科目であるため、健康3原則やダイエットに関すること、トレーニング方法などについて、様々な事例を入れながらおもしろおかしく学生が楽しめる科目となるように心がけながら授業をやっています。研究については、アメリカンフットボール競技中に引き起こされる傷害(主に足関節内側靱帯損傷、脳震盪、バーナー症候群など)のメカニズムや予防対策などについて、学会発表や論文などで研究成果を報告しています。また2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の開催が決定してからは、スポーツ・マーケティングに関する研究領域について興味を持ち始め、最近はその分野の研究会や学会などに参加して勉強しているところです。学内業務とは、学部内で振り分けられた様々な委員会や会議に代表として参加し学部に報告する、推薦入試や一般入試などの試験監督としての入試業務に携わるなどが大きなところです。また、体育会アメリカフットボール部の部長兼ヘッドコーチとして、週末はグラウンドに立っています。スポーツ推薦枠が無いため、アメフト未経験者が多数を占める部員に一から技術指導を行い、チーム一丸となって一部昇格を目指しています。

 

---帰国後から現在に至るまでの過程を教えて下さい---
WMUの修士課程で学んでいる時に、指導教官であったモス教授の授業が非常に楽しかったことより、いつの間にかスポーツ現場から教育現場で働きたいと思うようになりました。教員免許(保健体育)は持っていましたが、専門性の高いスポーツ傷害やトレーニング理論に関する内容を教えたいと思い、帰国後は母校である日本体育大学の博士課程に進学し、大学教員を目指しました。そして、2005年3月に博士論文「A Study of Ankle Ligamentous Injuries in College Football Players」で博士号(体育科学)を取得しました。また、進学と同時に学生時代に競技をしていたアメリカンフットボールのトレーナーとして、母校でアシスタントトレーナー兼オフェンスラインコーチを1年間、その後Xリーグに所属する東京ガスクリエイターズでヘッドトレーナー兼選手として3年間プレイしました。U-19日本代表チームのヘッドトレーナーとして海外遠征にも帯同しました。研究者としては、慶應義塾大学体育研究所にて2004年4月から5年間、助手・助教として勤めました。教育と研究だけでなく在籍期間中は、体育会アメリカンフットボール部ヘッドトレーナーを4年間、女子サッカー部コンディショニングアドバイザーを3年6ヶ月、端艇部コンディショニングアドバイザーを3年間、異なる競技の現場で経験を積んできました。しかしながら、個人的な意見ですが、この経験より日本ではATCとしてスポーツ現場で活動するのに少し限界を感じて、2010年3月に柔道整復師免許を取得しました。

 

---西村さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか?---
 たくさんの日本人ATCの方々と知り合う場であり、また様々な情報・機会を得ることができる場所なのかなと思っています。ここで親しくなったATCは、当然ながらアメリカで同じような境遇で頑張って資格を取得して、今に至っています。ですから、年齢や性別に関係なく何でも話せる仲間が集まる場であるように感じています。

 

---JATOに加入するメリットを教えて下さい---
 日本に生活拠点を置きながら、ATCとしての資格を維持するために2年間で50CEUを取得するのは、非常に困難だと思います。JATOに加入することにより、総会や様々なワークショップに参加して、最新のスポーツ医科学に関する情報を学ぶ機会を得るだけでなく、CEUも取得することが可能となります。留学して頑張った証として取得したATCの資格を失効せずに今も維持できているのは、JATOのお陰だと思っています。

---これからATCを目指している学生にメッセージをお願いします---
Education is not preparation for life, education is life itself.
この言葉は、留学していた時に出会った言葉です。今現在、ATCらしい仕事に就いている訳ではありませんが、ATCを目指して学んだことによって、様々な経験をして今の仕事をしたいという目標を見つけることができました。何事にもチャレンジすることによって、また一期一会で様々な人との出会いによって、本当にやりたいことが見つかると思います。興味のあることをもっと知りたいと思う“何だろう君”になって、学び続けることが自分の将来に必ず活かされると思うので、頑張って下さい。

 

西村さん、お忙しい中貴重なお時間ありがとうございます!! 何事も全力でチャレンジしているお話を伺う事が出来、胸が熱くなる思いになりました。
来月は、“知的な女性”を紹介して頂きましたので、楽しみにしていて下さい!!