皆さん、厳しい寒さが続きますが、いかがお過ごしでしょうか。テレビやネットのニュースでも平昌オリンピックの話題ですね。
さて、毎月15日にJATO会員の活躍をリレー形式紹介企画として、世界各国で活躍しているメンバーをFacebookとHomepage (Blog欄)で紹介しています。
先月は、逆境や困難もプラスに捉え活動されている井上さんのインタビューでしたが、今月は井上さんと同窓で帝京大学ラグビーのアスレティックトレーナーの大木さんになります。ラグビー全国大学選手権決勝直後のお忙しい中、インタビューにお答えいただきました。是非一読下さい!!

---アスレティックトレーナー(ATC)になろうとしたきっかけを教えて下さい---
きっかけは、高校野球の時に肩を痛めたことで、出会った理学療法士さんとの出会いでした。理学療法士さん(名前はもう覚えていませんが)から、スポーツ選手を専門に健康面やパフォーマンス面のサポートをする職業があることを教えていただきました。体を動かすのは好きでしたし、スポーツ選手を助ける仕事っていいなぁと思ったことを覚えています。
---アメリカ時代の一番の思い出は何でしょうか?---
母校Western Michigan University(WMU)のホームカミングのアメフトの試合で、ほぼ満員のスタジアムの中央に立った時の気分は忘れられないです。学生トレーナーとしてグランドに立っていたのですが、観客席のほうを見上げた時に感じたその迫力は、今でも仕事の原動力になっています。
帝京大学ラグビー部の活躍のお陰で、毎年その迫力を味わわせてもらっています!

---帰国後から現在の仕事に至るまでの過程を教えてください。(就職活動?の苦労話など)---
今でこそ帝京大ラグビー部で16シーズンお世話になっておりますが、それまでは多少の苦労がありました。
WMUを卒業後、ミシガン州内の小さな町で、クリニックと高校トレーナーの仕事をしました。勤めて半年くらい経ったある日、午前のクリニック業務が終わった時に、ボスに呼ばれ、「午後から高校には行かなくてよい。」と言われました。「あっ、これはニュースでよく聞くLay-offか。アメリカって本当にこういうことをするんだ。」と少し感心?しました。翌日には職業安定所を調べ、失職手当ての手続きをするのですが、1週間後に何事もなかったように、また元の職場に復職できました。これもアメリカらしいなぁと思います。
ただ、これを機に日本に帰国し仕事をすることを考え始め、同窓の井上鎮子ATCのご紹介で、帰国後すぐに名門いすゞ自動車バスケットボール部でアシスタント・トレーナーとしてお世話になりました。しかし、ここでも同部が一年で休部となってしまい、失職してしまいました。
私は、ATCとして働き始めた最初の2年(28~29歳)で、解雇・失職を経験したことになります。ただ、「浪人」は大学受験でも経験していたので、所属がないことに不安はありませんでした。また、渡米の際に、早稲田大学の恩師鈴木秀次先生から「留学したら、40歳くらいまでは一人前になれないよ。」という言葉を言われていたため、メンタル的にはビクともしませんでした。
幸いすぐに、中村千秋先生の(有)トライ・ワークスに就職し、帝京大学ラグビー部のポジションをいただき、今に至ります。二つの解雇・失職の経験から強く感じたことは、「今いる場所で頑張るしかない」ということでした。今日まで長い間帝京大学ラグビー部でトレーナー活動をして、お蔭様で今年もよい結果に恵まれました。帝京大ラグビー部で働き始めた当時の気持ち、心の底に決めたことを表してくれた言葉が次の言葉です。
「置かれた場所で咲きなさい: Bloom where God has planted you.」
これは、渡辺和子さんの本のタイトルです。いろいろな人の恩情やつながりで、今いる場所にいさせてもらっているので、それだけで感謝一杯です。
---現在の仕事内容を教えて下さい---
(有)トライ・ワークスの契約先の帝京大ラグビー部で、ヘッドトレーナーとして日々の練習や試合の選手のサポートをしております。また、トライ・ワークスのLSFA(CPR・AEDコース)やスポーツ現場の緊急対応関連の講習会の講師などを担当しております。
2015年に救急救命士資格を取得し、東京都町田市多摩丘陵病院で救急救命士業務もしております。昨年より、多摩丘陵病院所属の救急救命士2名と救急車1台が、帝京大ラグビー部の公式戦で救護カバーをしてくださりました!
---現在の1日の流れを教えて下さい---
140名の部員が所属するラグビーチームですので、日々様々なことがあります。毎日同じような順序で時間が過ぎるわけではありません。ただ、急な仕事も、いつもと変わらない日も、両方楽しめればいいと思います。仕事も私生活も楽しむには、家にも職場にも迷惑にならない範囲で公私混同かなと思います。
起床後娘2人の世話
10:00 家を出る
11:30 自主トレーニング@帝京大ラグビー部ウエイトルーム
14:00 帝京大ラグビー部 練習準備
15:00 ラグビー部練習開始
19:00 練習終了・治療サポート・ケア指導
22:00 業務終了

---大木さんにとってJATOとはどのような存在でしょうか?---
「仲間」の集まる場所です。日本とアメリカの両方の文化の酸いも甘いも知っている人が集まっている場所だと思います。地域や年代で多少の違いがありますが、アメリカ生活の中で、何かしら同じような経験をしており、それだけで「仲間」という意識が持てます。これだけ多様性の強い世の中、共通項が一つでもあり、しかもそれがアメリカ生活という実体験に基づいていることで、すごく親密感を感じます。
---JATOに加入するメリットを教えて下さい---
初めて会う人でも、ATCというだけで、何か安心やなつかしさを感じます。仕事をする上で、共感できる人を持つことは、長く仕事を続けるには絶対に必要です。
JATOの総会やATC対象のワークショップに行くと、会場全体がなぜか懐かしい感じをなります。年齢や性別など関係なく共感を得られる人達が集まっているからではないでしょうか。JATOに加入していることで、共感できる多くの人たちから刺激をもらい、仕事への勇気、情熱をもらっているように思います。
---これからATCを取得してアスレティックトレーナーを目指している学生に
メッセージをお願いします---
Seize the dayという言葉をメッセージとして送りたいです。
渡米すると、周囲には最初から野心や志を持っている人もいれば、取り敢えず渡米して自分探しをする人もいると思います。どちらにしても、思いのほか「平等に」時間が過ぎます。誰にでも平凡な日があり、特別な日もあります。ならば、自分なりに一日一日を大切に一生懸命過ごしてほしいと思います。
私が渡米した当時(1990年代後半)のアメリカと今のアメリカはかなり違いがあります。これから渡米する、または現在留学中の学生は、私達以上に多様な経験をすることと思います。素晴らしい機会に恵まれるでしょうし、その反対もあるでしょう。アスレティック・トレーニングという学問を通じて、アメリカ社会や人を見て来てほしいと思います。期待しています。
大木さん、お忙しい中貴重なお時間ありがとうございます!! そして、帝京大学のラグビー全国大学選手権の9連覇おめでとうございます。アスレティックトレーナーというだけでなく、救急救命士として安全で安心できるスポーツ環境作りが、帝京大学ラグビー部の常勝の一因でもあるのでしょうか。また、「今いる場所で頑張るしかない」と覚悟を決め、「仲間」を大切にすることもアスレティックトレーナーの大事な資質なのかとも思いました。来月は、“多才でよりパワフルなアスレティックトレーナー”を紹介して頂きましたので、楽しみにしていて下さい!!